シンポジウム報告 / Report
『世界が期待する”エクセレンス”な日本』
文化を消費しない観光の在り方を
主催のロムアルド・デル・ビアンコ財団は、世界遺産フィレンツェに本拠地をもち、20年以上前から文化を通じた交流を支援している非営利団体です。ユネスコ・ワールド・ヘリテージ・センターや、世界遺産認定機関イコモス、世界博物館会議イコムなどとも連携し、文化観光のガイドラインといえる「ライフ・ビヨンド・ツーリズム」を推進しています。現在は欧州を中心に約500の大学や自治体、観光協会と連携しながら活動を拡大しています。日本での本格的な紹介はこれが初めての取り組みです。文化の多様性を尊重し、異文化を体験する事を通じたツーリズムも在り方を考えてゆくために、今回は国連大学を会場にシンポジウムを開催する事となりました。世界中から注目される日本文化ですが、私たち日本人は往々にして日本の魅力を知らなかったり、世界に対してどう発信してゆくべきかが分からなかったりします。伝統文化、食、地域づくりなど様々な分野で活躍中の方々を登壇者として向かい入れて未来型思考で対話を行いました。
シンポジウム当日の午前中、財団の会長であるパオロ・デル・ビアンコ氏は観光庁の溝畑宏長官と対談を行いました。「行き過ぎた商業主義的な観光は、文化そのものを破壊してしまう可能性があります。既に観光の本質は次の次元に入りました。地域固有の有形無形の文化を保護しながら、地域経済を潤してゆくような仕組みづくりを推進してゆくべきだと考えています。」とパオロ氏。日本文化の背景にある精神性や歴史の蓄積を今まで以上に強く全面に押し出して発信してゆく事はこれからの日本観光の軸となります。広告を通じて世界に日本をアピールする事だけではなく、文化そのものを発信してゆく事も今後の観光政策として重要な位置づけとなる事を共感しあいました。
シンポジウムはパオロ氏の基調講演から始まりました。「当財団は非営利の精神を元に世界の文化遺産と観光を結びつけるライフ・ビヨンド・ツーリズム・ポータルサイトを構築します。宿泊施設ブッキングサイトと連携し、文化観光を推進するツーリストがそのサービスを利用する事によって得られた利益を活用し、世界中の有形無形の地域資源を紹介してゆきます。」と今後の財団の方針を発表しました。欧州を中心に始まった動きですが、特に日本はそのモデルエリアとして位置づけられており、今回はこうした大きなシンポジウムが開催された訳です。欧州側にとって日本をモデル地域とする事はライフ・ビヨンド・ツーリズムの精神を紹介し、発展させてゆくために最も分かり易い事例となるとパオロ氏は熱意を語ります。このポータルサイトの中には日本の有形無形の情報を紹介してゆきます。
*なお日本の場合は更に『ビヨンド・ジャパン』という名称で、エクセレンスな日本文化を紹介してゆく財団公式のウェブマガジンとi-phone、アンドロイドアプリも開発予定です。
「日本発信の3つのヒント」
シンポジウムでは観光庁の山田尚義審議官からご挨拶を頂戴しました。こうした世界の潮流と連携し、日本の観光振興を行ってゆく事は非常に歓迎される事であるとの方向性を会場の方々と共に確認する事が出来ました。その後に行われたパネルディスカッションはアイディアのシェアを目的としており、各界の著名人が自身の経験を元に日本のエクセレンスを発信してゆくためのヒントやアイディアを出してゆくスタイルで対話が進行し、それぞれの方々より闊達なアイディアが発表されました。「私は日仏文化交流をビジネスを通じて進めていますが、フランスからみた日本という観点からですが、マンガやポップカルチャーのように非常にポピュラーな文化しか発信していないと思います。日本は手作りの文化であり、世界的にどこにも無い事です。どのように日本にある世界にない文化を理解力のある海外の方々にもっと伝えていってよいと思います。」、「日本の文化はまだまだ藩という単位で文化の伝承が行われているのかもしれない。日本というものの背景にある文化そのもの理解し、自分たちの町を自分たちがよく知ってゆく事が海外に発信する基本かと思います。」、「相撲には所作があります。力水、四股を踏む、塩をまく、ちりを切るなど、相撲を支えている伝統文化の精神もしっかり伝えてゆくべきだと思います。」、「世界はローカルな地域の集合体、ローカルを強く発信する事が大切です。日本人は世界で一番日本を知らないと思う。もっと知る事が大切です。そして同時に外国人の目から見た日本をもっと知る事もそれと同じくらい重要です。」、「日本酒の消費量の衰退と日本文化の衰退が相関関係にあると思う。お神酒、田植えの祭り、祝い事の際に日本酒を飲み、日本文化は酒と共に定着してきた。日本酒を軸にした日本文化の発信はそこにこそあると思います。」、「世界中の数多くの海に潜って来た中で感じますが、日本には世界に誇れる海洋文化や美しい海があります。こうした海を通じた情報発信も大切だと思います。」、「旅は世界の潤滑油です。日本のこうした取り組みを発信する事と、世界の取り組みを旅を通じて知る事で、世界平和にも繋がるのではないでしょうか。」と、まさに自らの足で歩かれて来たからこその実感の伴ったアイディアが数多く飛び出しました。
最後に跡見女子大学観光マネジメント学科の篠原靖准教授が今回のシンポジウムを受けて3つの提案としてまとめて下さいました。「難しい事を如何に分かり易く加工出来るか」、「優しい事を如何に深く追求できるか」、「深い事を面白く」。まさにこれから日本を世界にエクセレンスな文化を発信してゆく上で腰を落ち着かせて発信してゆくべき指針になるのではないでしょうか。海外に発信できる宝物の山である日本固有の文化を軸に日本版のライフ・ビヨンド・ツーリズムを仕掛けてゆく事に期待がされます。
以上
交流会
交流会では宮城県気仙沼の食材と日本酒「蒼天伝」を頂きました。三崎恵水産様と男山本店様のご協力で盛大に交流会が開催されました。



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